2018.1.
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上記の文章は、2004年に書いたものです。
14年の歳月が過ぎ、その後の変化について書いておきます。
●(1)物理的バリア
物理的バリアに関しては、前回の「【14年後の解説】━左利きの現状を見よう/左利き私論―はじめに(1)━」のなかでも一部紹介しましたように、少しずつ改善されてきてはいます。
しかし、まだまだ画期的に進歩したと言える状況ではありません。
たとえば、施設面などでは新たな障壁も生まれてきています。
2004年の文章では、銀行の紐付ペンについて書いていました。
今では、ATMの指静脈認証読取装置の問題があります。
読取装置が右側にしかないのです。
そのため左手を登録している場合、まさに駅の自動改札機のケースと同じ不便さが生じています。
左腕を身体の前で窮屈に右側に寄せなければならないのです。
*参照:
『レフティやすおのお茶でっせ』2009.12.24
『レフティやすおのお茶でっせ』2009.12.24
もう一つ例を挙げましょう。これは改善された例です。
カメラがそれです。
(右利き専用品の典型――完成形とも言うべき一眼カメラに関しては、まだ大きな改善はなされてはいませんけれど、スマホ利用タイプのカメラでは、左右両用タイプのものも出ています。)
コンパクトカメラでは、キヤノン「PowerShot N」という機種で、シャッター・ボタンにかわり、シャッター・リングが採用され、右手でも左手でも、上からでも下からでも押せるものになりました。(その後に出た新機種「N2」では横でもどこでも押せるようになりました。)
インスタントカメラの富士フイルムのチェキの新機種「instax SQUARE SQ10」は、左右にシャッター・ボタンが設置されました。
どちらのカメラも基本的に左右シンメトリーの形状で、左右共用品の典型になっています。
それに先立つ、2009年に登場した富士フイルム「FinePix Z300」というコンパクトカメラには、モニターの液晶画面をタッチすることでシャッターが切れるタッチ・シャッター機能が搭載されました。
その後、各社の一部カメラでも採用されるようになり、これも左右どちらの手でもシャッターが切れるカメラとなっています。
*『レフティやすおのお茶でっせ』過去の【左利き対応カメラ】記事:
【左右共用一眼タイプ・スマホ利用カメラ「Olympus Air A01」】
・2015.4.11
【左右共用カメラ「PowerShot N/N2」】
・2015.3.18
Canon デジタルカメラ PowerShot N2 自分撮りモード搭載 PSN2
(画像:右手でも左手でも使える、360°全方向シャッター・リング)
・2013.5.15
・2013.4.26
・2013.1.30
・2013.1.28
(画像:右が2013年に買った「キヤノンPowerShot N」と、左が左手用フィルム・カメラ「京セラSAMURAI Z2-L」)
・2014.10.20
・2009.9.21
左手でもシャッターが切れるデジカメ「FinePix Z300」
左手でもシャッターが切れるデジカメ「FinePix Z300」
【左手用カメラ「京セラ サムライSAMURAI Z-L/Z2-L」】
・2004.8.5
●(2)心理的バリア
心理的バリアに関しては、これも前回の「【14年後の解説】━左利きの現状を見よう/左利き私論―はじめに(1)━」で紹介しましたように、少しずつ改善されてきてはいます。
左利きを一方的に「悪」と決めつけるような、理不尽な考え方はほぼなくなったといっても過言ではない、というところまで来ています。
反面、では「左利きを容認する」といっても、「積極的に左利きを擁護し支援しよう」という態勢とは違い、「黙認する」というレベルが大半のように思われます。
確かに一部「左利きフェチ」と呼ばれる人たちが出現し、左利きに好意を持つ人も増えてきました。
ところが、それによって、左利きの不便解消のために、具体的かつ積極的に社会の構造を変革しようという方向に進んでいるかと言えば、その段階ではありません。
明らかな目に見える差別は減ったけれど、社会の奥底にある偏見は残っている――依然、目に見えない心理的なバリアが大手を振って存在している、というのが現状でしょう。
●これからの社会
社会においては、右利きの人たちの側の問題もさることながら、左利きの人たちの側にも問題があります。
「生れつき左利きだから」という理由で身にしみついてしまった意識の問題です。
実は、自らの不便さにも気付いていない左利きの人も少なくないのです。
それは、「○○はこういうものだ」という思い込みや「どうせ××だから」というあきらめ、諦観から来るものです。
それゆえに、右利きの人たちがいかに恵まれた環境にいるのか、どれだけ楽をしているのか、という事実に気付いていない左利きの人たちが少なくないのです。
これも心理的バリアの重要な要素です。
「目覚めよ、左利き!」と叫ばずにはいられません。
この問題は、左手・左利き用品の普及により、改善されることでもあります。
そういう意味では、二つは相互に関連している、とも言えるのです。
成熟社会である現代は、「最大多数の幸福」を追求する時代ではなく、「万民の幸福」を求める時代だ、と私は考えています。
真に豊かな時代になるように、私たち左利きの人自身が、自分の問題は自分から進んで解決することが重要です。
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*【左利きを考える―レフティやすおの左利き私論―はじめに】