上記の文章は、2004年に書いたものです。

14年を経ても「左利きの現状」は、残念なことにあまり変化はありません。

大勢は、確かに左利きを忌避する傾向が減り(一部では「左利きフェチ」といった人が増えているといいます)、「左利きは左利きのままで」という子育てが浸透してきています。
また、左手・左利き用品もかなり普及し、特に子供用左手ハサミに関しては、左右平等がかなりのところまで進んでいます(まだまだデザイン等でハンディはありますけれど)。


しかし、上記の文章に例として挙げているもので言えば、自動改札機は、定期券やカード類はかざせばいいだけのタッチ方式になっている点のみが「進歩」です。

スリットに挿入する方式から比べれば、かざすだけのタッチ式は確かに「進歩」ですが、依然「向かって右側の一定の場所に」という大枠に変化はありません。
また、切符はスリットに挿入する方式のままで全く変化はありません。

乗車券の検知装置が左右に設置された機械は登場していません。
また、一定の割合で「左用」の自動改札機が導入されている、という話も聞きません。
十年経とうが二十年経とうが……、というところです。


書字に関しては、今でも一部には「右手使いを良し」と考える人たちがいます(主な理由は、「右手で書くのが作法だから」や「見栄えがよろしくない」というものから、「字は右手で書きやすくできている」に変化していますが)。

義務教育の現場では、毛筆においても右手使いを強要することはなくなったようです。
左手書きの研究も始まっているようで、いくつかの論文が散見できます。


総じて言いますと、パーソナルの分野ではかなりの進歩が見られるものの、社会的な環境ではまだまだ「右利き優先」の「右利き偏重社会」であることに変わりはありません。

それに楔を打ち込もうという左利き認知普及活動も、さほど見られません。

(1)左手・左利き用品を常時展示販売している文房具店・神奈川県相模原市の「菊屋浦上商事」

(2)2007年から8月13日の「国際左利きの日」に、箸を右向きに置く運動を続けている「レフチャス」

ぐらいのものでしょう。

一部のSNSで左利きのコミュニティをつくっているところもあるようですが、一般に開かれたものではなく、社会全体へのアピール度は低いように思われます。

後は、我田引水になりますが、
2003年のクリスマスから始めた、「左利き」をメインテーマにした私のブログ『レフティやすおのお茶でっせ』
2005年から始めて13年目に入る、私のメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
ですね。


書籍では、2009年に、イギリスの「レフトハンダーズ・クラブ」を主宰する(自身左利きで左利きの子を持つ母でもある)ローレン・ミルソムさんの著書の翻訳、左利きの子育てガイド

(a)『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』(ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍 2009.4)

が出版されている点は、特筆すべきでしょう。
(ちなみに、巻末資料の作成には私も協力しています。)


他にも、左利き関係の本がいくつか出版されています。
中でも注目すべきものは以下の通りです。

日本の左利き・利き手研究の権威・八田武志さんの
(b)『左対右 きき手大研究』化学同人(DOJIN選書 18) 2008.7.20

イギリスの利き手・左利き研究の権威 クリス・マクマナスさんの
(c)『非対称の起源 偶然か、必然か』大貫昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006.10

左利きの科学ジャーナリストが左利きの謎に挑み世界を駆けるサイエンス・ノンフィクション(日本での左利きゴルフ大会や日本人研究者も登場)
(d)『「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎』デイヴィッド ウォルマン/著 梶山 あゆみ/訳 日本経済新聞社 2006.7

右利き偏重社会での左利き生活の不便さを語る
(e)『左利きの人々』渡瀬 けん/著 中経の文庫 2009.1

左利きの元教師が自身の書字「矯正」体験と左に戻した体験を通して、左利きの「矯正」に反対する本
(f)『ぼくは左きき 本当の自分であるために』度会金孝(わたらいかねたか)著 日本機関紙出版センター 2014/12/18


------------------------------------------------------------------------
*【左利きを考える―レフティやすおの左利き私論―はじめに】